こんにちは。
税理士の榎野と申します。
税理士に依頼しなくても相続人ご自身で相続税を申告することは可能です。今回はご自身で申告することのメリットやデメリット、リスク等をご説明したいと思います。
1、自分で相続税の申告することのメリット
相続税の申告をご自身で行うことのメリットは以下となります。
①税理士への支払いが発生しない
相続税の申告に必要な税理士報酬の相場は遺産総額の0.5~1%となります。例えば相続財産が1億円であれば50万~100万くらいの支払いが発生します。
②自らのペースで進行できる
税理士に申告の依頼をすると何度か面談を行う必要があり時間がとられます。また面談中は色々な報告を受けたり質問に答えなければならず1回の面談時間も2~3時間となります。自分で申告することで自らのペースで進行できるのはメリットかもしれないですね。
2、自分で相続税の申告が可能な場合
以下の①②③に当てはまる場合には比較的簡単にご自身で申告することも可能です。
①相続人の数が少ない・・・相続人が一人、もしくは相続人が少なく分け方が決まっている場合はスムーズに進行できます。
②相続財産が現金や預貯金だけの場合・・・相続財産の中にご自宅等の不動産がある場合には評価に専門的な知識が必要となります。
③財産額が少ない場合(5000万円以下)・・・財産額が少ない場合には税務調査のリスクも少なくなります。
上記の場合には、ご自身で作成した申告書や書類を税務署の相談窓口へ持参して見てもらうのもよいでしょう。
しかし税務署の相談窓口へ行っても、評価を下げるアドバイスはしてくれないのでご注意ください。
3、自分で相続税申告することのデメリット
自分で申告することはもちろん可能ですが、デメリットやリスクが発生するので注意が必要です。
①手間がかかり申告期限に間に合わない可能性がある
相続税の申告は多くの資料が必要となり専門的な知識も必要です。最初は自分でやっていても、なかなか前に進まず申告期限(お亡くなりになって10か月)が近づいてきて最後には税理士に依頼する方が多いのも事実です。申告期限が近いと通常よりも高い税理士報酬となるので余計な出費となります。
②本来よりも多くの相続税を支払う可能性
相続財産の評価額を下げる方法や、相続税を控除できる特例はたくさんあります。しかし、そういった評価方法や適用できる特例は各人それぞれです。申告したのはいいが、相続税が少なくなる方法を知らず、または適切に使えておらず、相続税を多く支払ってしまったということはよくあります。
③二次相続のことを考慮せず申告
例えば父が亡くなり相続人が母と息子の場合、母が全て相続すれば相続税はかからないこともあります(基礎控除を超えていれば申告は必要です)。しかし、母が亡くなった際(二次相続)には相続税が多額となってしまうことはよくあります。
トータルで相続税が少なくなるように考えるのはご自身では難しく、税理士に依頼してアドバイスを受けていればといったお話はよく聞きます。
④税務調査のリスクとペナルティ
税理士に依頼していない申告書には間違い(土地評価、資産の計上漏れや贈与の有無)がある可能性が高いため、税務署としても慎重に内容を確認します。間違いがあり相続税が少なくなっていた場合には税務調査のリスクがあり、また過少申告加算税や延滞税といったペナルティが発生してしましいます。
しかし、間違えて相続税を多く支払っていた場合には税務署は指摘してくれません・・・
4、まとめ
相続税の申告を自分で行う割合は全体の約15%です(令和4事務年度 国税庁実績評価書より)
相続人が少なく不動産が無いといった場合には比較的申告しやすいかもしれないですね。
しかし、税理士に依頼しないことによるデメリットは先程お伝えした通りです。
その時の相続だけでなく、次の相続に対する相続税対策といったアドバイスも税理士は行ってくれます。
相続税対策には生前贈与や不動産の活用、養子縁組、小規模宅地適用のための対応、生命保険等様々あります。相続対策はご家族の構成、財産内容等によって一人ひとり異なるため、事前に簡易的なシミュレーションも行うことができる相続に強い専門家に相談の上で検討することをお勧めします。